2つの視点から標記研究課題に対するアプローチを試みた。1つは、非ユークリッド幾何成立過程における高度な経験主義に着目したアプローチであり、いま1つは、小高俊夫氏(元静岡大)の図形領域におけるスキーマ形成と範例総合学習に依拠し、教師教育、教科書研究への展望をもちつつ行ったアプローチである。後者の視点からのアプローチはまだ形をなすまでにはなっていないが前者のアプローチによる研究は、第36回数学教育論文発表会(日本数学教育学会主催 北海道2003)において、「学校数学図形領域におけるカリキュラム開発に関する研究」と題して口頭発表を行った。そこでは、数学教育のカリキュラムの開発に必要な4つの視点、すなわち、認識論的視点、教授学的観点、テクノロジー的観点、政治学的観点のうち、特に、認識論的観点に立ってガウス、カント、ヒルベルトなどにおける高度な経験主義を念頭におき、幾何学による諸空間の構造や観察されるべき公理の最少性に着目して考察を深めていった。その結果、学校数学図形領域のカリキュラム開発においては経験主義の観点からは次のような活動を学習者に促していくことの必要性が示唆された。 (1)必要観を伴いつつ、既知の命題を基にして命題を局所的に組織化するとともに、実験・実測などによる命題の推測、検証を行う。 (2)局所的準体系において、演繹の基になる命題の正しさを探る。 今後は命題の局所的組織、すなわち局所的準体系を具体的にどのような教材で実現していくのかが課題になるが、それをスキーマ形成と範例統合学習の見地から具体化していこうと思念している。
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