研究概要 |
近年、Williams Syndromeの音楽認知(絶対音感や音記憶)に関心が寄せられているが、多数が医学・脳神経学の領城に属し、心理学や教育学の研究は皆無に等しい。発症率の低さ(1/20,000人)、祉会的認知の低さなどの理由により、周囲からの理解が遅れ、誤解されることも多いのが現状である。そのため、人問行動的研究および病理の追求、そして療育・教育技法の開発を急ぐ必要がある。 根津は、Howard.M.Lenhoffらが中心となって米国ボストン近郊で実施している"WSのための芸術キャンプ"を基に、平成14年度に、音楽プログラムの開発・実践を試み、プログラムの参加者の表現行為(音楽・絵画・運動)の特性を次のようにまとめた。 (1)リズムに対する親和性やメロディの記憶力が高く、能動的な音楽活動を発展する力を持っている。 (2)受動的な活動では、音楽的な文脈(雰囲気)を読み取り、感情との関連を言語化することができる。 (3)基本的には、即興的な活動に対する不安や舞台恐怖がない。 (4)創作活動では、イメージを音で象徴化する力があり、自分の作品のイメージを言語化することができる。ただし、読譜は困難である。 (5)外界の音・音楽や既成の楽曲を再生する力がある。 本年度は、8月に米国のプログラムへの視察し、カナダ、アイルランドの団体の責任者や、日本のテレピ局の取材クルーなどと交流し、日本におけるプログラムの可能性や課題を見出すことができた。並行して、8月3日〜5日に三重大学において、2回目の「芸術プログラム」を実施し、5名の対象児に対して、絵画、音楽、体育、調理などの活動を展開し、美術科との連携で、「美術」「言語」「舞踊」「音楽」を融合した心理臨床的な機能を内在する「芸術プログラム」を開発した。
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