研究概要 |
子ども理解は、算数・数学指導においても必要不可欠である。本研究では、子ども理解で最も基本的な教授行為であるリスニングに焦点を当てる。 まず、理論的な枠組みを、J.Weissglass, B.Davis, A.Colesの研究をもとに検討した。その上で、数学教師のリスニングとして、評価的リスニング、解釈的リスニング、変換的リスニングの3つの形態を考えた。評価的リスニングは、「意図された計画を逸脱することなく実行できたかを公平に判断する」ものであり、「評価的リスニングは学習者の責任である」。解釈的リスニングは、「聴き手は子どもの考えを評価するのではなく、可謬性も認めながら、活動的な解釈を提供したり、子どもに考えの明確化を求めたりする」。変換的リスニングは、「聴き手は話し手から更に距離を置き、話し手の言葉を聴き手の観点から再構成し、話し手の考えに質的な変容をもたらす」。その中でも特に、「他の観点の受容」や「子どもの過去・現在・未来の接続」を生み出す変換的リスニングの重要性を指摘した。 一方、数学教師は必ずしも好ましいリスニングをいつでもできるわけではない。時には、ミスリスニングをする。本研究では、3つのミスリスニングの形態を考え、そのメカニズムとそれを回避するための方策について検討する。ミスリスニングには、「何らかの事情で、教師が子どもの意図を誤って捉える場合」「教師の理解範囲を越えるため、子どもの意図が捉えきれない場合」「教師にとって都合の良いものだけを選択的に聴いて、子どもの意図を聴き落としてしまう場合」の3つの場合が考えられる。 今後は、算数・数学の授業を教師のリスニングの観点から分析・検討する。特に、数学指導としての変換的リスニングの具体的な事例分析をする必要がある。3人の研究者がそれぞれの地域で事例を集め、分析・検討する。
|