研究概要 |
1.学級規模と習熟度別指導についての理論的考察 学級規模に関し,先行研究から,少人数指導が常に有効であるとは限らないことが分かった。つまり,実施学年については,小学校低学年では少人数指導が有効で,その効果が高学年でも持続されるが,小学校高学年や中学校での少人数指導の効果は教材に依存することが分かった。 また,習熟度別指導に関しては,習熟度別指導の問題点を指摘した研究があるが,習熟度別指導の目的や実施方法を,事前に,児童・生徒に丁寧に説明すれば,彼らの心情面の問題点は克服され,数や文字式の計算といった技能的な内容については習熟度別指導が特に有効であることが分かった。 2.少人数指導にふさわしい教材開発とその実践 少人数指導にふさわしい授業として,類似性の認知によって算数・数学概念を構成するという類似探究授業を考案し,その教材をいくつか開発し実践した。その結果,この類似探究授業が児童・生徒,特に、算数・数学を苦手とする児童・生徒に有効であることが分かった。また,この類似探究授業は少人数学級だけではなく,普通規模の学級でも同様の効果があることが分かった。 3.習熟度の違いに応じた教材開発とその実践 TIMSS及びTIMSS-Rで第1位の成績を収めたシンガポールの教科書を分析した結果,日常生活に即した教材が豊富に盛り込まれていることが分かった。これらの教材は我が国における発展的な教材としてふさわしいものが多く,それえらのいくつかを習熟度の高い生徒に実践した。また,シンガポールの教科書は基礎・基本を重視していることも分かった。こうした基礎・基本教材を習熟度の低い生徒に実践した。こうした実践成果を数値で確認するところまでには至らなかったが,生徒の反応から,好感触を得た。
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