本研究は、わが国の家庭科が抱える「子どもの学習評価」の問題を解決する示唆を得るために、多様な学力論を有する現代アメリカ家庭科における学習評価研究の発掘とその分析により、各家庭科学習論に対応した学習評価の実態とその特質・課題を明らかにすることを目的としている。 本年度は、研究第三年度に当たり、当初の実施計画に基づき、次の4段階の研究を行った。 1.不足している資料を、前年度より継続して収集した。 2.昨年度選定した研究対象の典型的事例の分析を次の手順で行った。 (1)本研究では、研究対象として取り上げた家庭科を、「家庭生活の事実的理解を図る家庭科」(1960年代)、「家庭生活の価値的理解を図る家庭科」(1970年代)、「家庭生活の概念的理解を図る家庭科」(1980年代)、「家庭生活の概念的理解・価値的理解を図る家庭科」(1990年代以降)の四つに分類した。この分類に従い、典型的事例の分析を行うための、資料を作成した。 (2)作成した資料に基づき、本年度当初の計画であった分析を次の4点を中心に進めて行った。 (1)目標構造を整理し、評価すべき期待される学習成果とその評価の課題を明らかにする。 (2)具体的な評価活動の構造を明らかにする。具体的には、問題文あるいは選択肢などでの提示内容、子どもに求められる回答行為を、各々の評価問題・評価活動から抽出し、その内容と構造を明らかにする。 (3)作問法・判定法などを理論化し、それらの評価活動の構成論理を明らかにする。 (4)それらの評価活動を規定する家庭科学力論と社会的要請・背景などから、その評価理念を明らかにし、各々の評価研究の特質、意義、問題点を考察する。 しかし、実際には、(2)の(2)を進めていくための資料作成とその分析を行うことに時間がかかり、それに基づいた(2)の(3)(4)の考察に関しては、来年度も継続して行うことが課題として残された。 3.(2)の分析・考察に際し、わが国およびアメリカ・イギリスの家庭科教育と社会科教育の評価研究の現状を把握するために、6月・10月に群馬県前橋と東京都で開催された家庭科教育学会および10月に広島県で開催された社会科教育学会に出席し、資料を収集するとともに、評価研究の動向とその分析・考察方法を把握した。
|