研究概要 |
社会科教育を効果的に実施するには情報ネットワークの活用が不可欠であるが,実態調査および文献調査の結果,まだ試行錯誤の段階にあることが明らかになった.特に,本年度は熊本県の495校の小学校を対象にして小学校3年生から6年生の社会科見学の実態をアンケート調査で捉えた.その結果,小学校の立地条件(都市部の小学校と過疎地の小学校などのような立地条件の違い)により実社会を対象にした社会科教育の実態に格差が発生していることが分かった.例えば過疎地の小学校では情報関連の企業が近くにないので,教科書にでている情報産業を具体的に理解させるには困難な教育環境にあるといえる.インターネットを活用すれば補完できる部分もあるが,情報通信インフラストラクチャーが不十分な過疎地の小学校では,インターネットの効果も上がっていない. また一方では,小学校が都市部に立地しており,見学先の企業も多い教育環境にありながら,特定の企業しか社会科見学を実施していない場合もある.これは担当教師の社会科見学に対する認識の差によるものであると考えられる. 本年度の調査研究の結果,社会科教育における地域資源と情報ネットワークの有効活用を図るには,小学校の地理的格差の要因を考えるとともに,社会科見学に対する教師の認識のレベルも大きな要因になっていることを明らかにした.さらに本年度の結果をもとにして,次年度から具体的な先進事例(外国も含めて)の分析と,社会科教育推進上の社会経済的な阻害要因について分析し,IT時代に相応しい教育システムの在り方を考察したい.
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