1.今年度、福祉学習(教育)・ボランティア学習、総合的な学習における社会体験的学習等の議論や先進的実践事例の収集、整理するとともに、学校関係者や社会福祉関係者との意見交換等を行った。いわゆる「学力低下」批判や総合的な学習に対する不信などが広がるなかで、福祉学習を含め体験活動型の学習活動に動揺が生じている。他方で、こうした学習活動を学校カリキュラム全体の中に明確に位置づけ、展開してきた学校においては、教師集団が地域社会の資源を生かし、また保護者のみならず地域住民、社会的施設や取組みと共同した学校独自のカリキュラムづくりが行われている。すなわち、特色ある学校づくりがその中心であるカリキュラムづくりに焦点化され、学校を取り巻く地域社会の資源と支援を取り込みながら構想され実践されることが、教師のみならず、地域社会のなかで共有され始めている。このことは、福祉学習が単なる擬似的体験やイベントにおわらず、継続的で経験と認識の深まりを伴った学習活動となる可能性を有し、学校階梯を越えた福祉学習カリキュラムの構想・展開を可能とする基盤となると考える。 2.研究代表者は、一昨年度から京都府立南八幡高等学校の普通科(総合選択制)人間環境コースのスーパーアドバイザーとして、同校の福祉学習(教育)カリキュラムや教材の開発にかかわり、実践の参与観察を重ねている。同校教員とともに高校段階の福祉学習(教育)の可能性を探究する中で、中学校、高校、大学のそれぞれの階梯における福祉学習(教育)の内容の精選化とともに、各段階の生徒の生き方在り方を含み、とりわけ進路選択・職業選択のあり方に焦点化して中高連携、高大連携を見通したカリキュラム構成や教材の提示といった実践的課題が明らかになった。
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