研究概要 |
聴覚障害児の手話スキルの獲得と日本語リテラシーとの関係を分析するため、前年度に引き続き幼児期から日本語と手話の両方の獲得を目指して指導を行っているろう学校幼稚部での授業と自由遊び場面、及び家庭での伝達の様子を継続的にVTR記録した。 現在、これらの記録を、コミュニケーション・モード、語彙、文構造、及び語用論的観点から、分析している。 1,教室での自由遊び場面で見られる聴覚障害幼児達の自発的な相互コミュニケーションが、就学前6ヶ月頃より急激に増えつつあること、幼児同士のコミュニケーションは手話が中心であるが、手話表現の頻度、内容共に個人差が大きくなってきており、また、相手により手話、指文字の組み合わせ方を変化させているものも見られ、家庭でのコミュニケーションのみではなく、その他の要因についての検討の必要性が示唆されている。 2,文字については、意図的な指導はなされていないが、授業開始前の自主的活動としての文字の読みと指文字つづりや文字カード並べの成果として、自然に文を書くようになり、また、漢字や、漢字らしきものを遊びの中で書く行動も見られ始めてきている。 3,コミュニケーション能力が高くなり、相互交渉的な指導が可能になってきており、聴覚障害教師の授業を中心に、クラスの全員に自分の行動や考えを発表したり、それに対して質問したりする活動が活発になってきている。聴覚障害教師と生徒とのコミュニケーションと、聞こえる教師とのコミュニケーションとの質的差についての検討が必要であることが示された。 4,助詞の理解と使用に関するテストは、絵画の改訂を行い聾学校小学部の生徒と普通小学校1,2年生の評価を行い、使用可能なテストを作ることが出来た。 今後は、手話能力の評価とリテラシーの評価の他、関連要因を整理しながら継続して資料を収集し、分析を重ねたい。
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