研究概要 |
聴覚障害児の手話スキルと日本語リテラシーの獲得との関係を分析するため、幼児期から日本語と手話の両方の獲得を目標に据えて指導している聾学校幼稚部での授業場面と、自由遊び場面および家庭での周りの人とのコミュニケーションの様子を、前年度に引き続きビデオ録画し、分析を継続している。 1,授業場面で、幼稚部の聴覚障害幼児たちのコミュニケーション活動は対教師、幼児相互ともに活発になってきていたが、小学部になって、コミュニケーション活動の様相は授業形態の変化にともなって大きく変わってきている。文字表記の指導が授業の中で重きを増してきているが、授業での文字指導の内容と児童たちのコミュニケーション要求とが乖離する場面が多く、コミュニケーション活動を抑制している場面が見られる。文字導入の指導方法の検討が課題として提示された。 2,聴覚障害を持つ教師の指導の特性については、定性的な分析はできていない。手話に関するプロソディの分析をする視点の検討が必要とされる。 3,助詞の理解と使用に関する評価は、普通小学校1,2年生の基準評価ができた。聾学校生徒については評価を繰り返して変化を追跡しているが、個人差が大きく、変化を規定する要因に関してはまだ明確にはなっていない。 4,聴覚障害児の日常的なコミュニケーション行動については、情報探索に関するコミュニケーション行動が少ないことが問題となる。コミュニケーション行動のカテゴリー分析の方法を検討して、今までのビデオ資料の再評価を行う必要がある。 5,手話の評価については、コーダ(両親聾の大学生)の協力を得て再評価を検討している。 今後資料の収集を続けると共に、上記の点から蓄積された資料の細かい分析を重ねたい。
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