本研究では将来保育者となる学生に子どもの側からの視点に基づきながら、日本の伝統的な音楽文化を通して学生がよりよい保育者となるために、自ら自己改革を行うための教育の内容と方法を検討することを目的としている。 研究は1地域に遺る文化的な遺産、地域の祭りや民俗芸能の調査、2本研究者自身が伝統芸能を実践を通して学ぶ、3、伝統芸能の実践を通して学生が何を学んだのかを調査する等の視点から研究した。1については京都や岩手県遠野市、あるいは神の島といわれる沖縄県久高島、冨山県八尾町等を人の暮しと音楽の観点から調査した。2については本研究者自身が仕舞や地唄舞を継続的に学び、伝統芸能を学ぶことが本研究者の音楽観にどのような影響を与えるのかを調査した。3については将来保育者となる学生を対象に民俗芸能や伝統芸能の実践を行い、それらの実践を通して学生がどのような事を感じ、学生の保育者としての在り方にどのような影響を与えるかを、自由記述によるアンケートによって調査した。 研究の結果、日本の伝統的な音楽文化の在り方は、歌う事、弾く事、動く事がバラバラに行われるのではなく、常に一体化した形で行われており、子どもの音楽の仕方と共通するものがみられた。また伝統芸能の実践は、学生にとり初めての経験であったが、舞の練習過程のなかで学生は、お互いに教え合いながら学び合った。その結果、自己と向き合い、自分の中の「人と関われない」「何事にも消極的」等の課題を自ら発見し、意識を変えることへとつながった。日本の伝統的な音楽文化に触れたり、実践する事は学生に自分への気付きを促し、日々の生き方に多くの示唆が与えられた。
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