研究概要 |
本研究では、日本における特別ニーズ教育成立の歴史的系譜を明らかにするとともに、さらにそれを日本に先行するアメリカとスウェーデンにおける多文化多民族国家の形成と特別ニーズ教育の創出の連関性に着目しつつ、多文化協同に向けた社会・教育システムの成立過程を歴史的に明らかにした。分析の視点は、(1)多様なニーズに応じる教育理論・原理の系譜、(2)子どもの多様なニーズに応じる教育実践の源流、(3)多文化地域におけるソーシャルワークと教育の連携・協同に関する史的研究の3点であった。 日本の特別ニーズ教育の歴史的系譜では、(1)「恩賜財団愛育会の母子愛育事業と困難児問題-総力戦体制下の母子保健衛生の近代化と「皇国民」の保護育成-」(『学校教育学研究論集』7、2003)、(2)「戦間期日本における保育要求の大衆化と国民的保育運動の成立-保育要求のなかの保育困難児問題を中心に-」(『東学大紀要』55、2004)、(3)「戦前における愛育研究所「異常児保育室」と障害児保育実践研究の検討-保育者・小溝キツの知的障害児保育実践を中心に-」(『発達障害研究』26(1)、日本発達障害学会、2004)などの研究成果を発表した。 アメリカ合衆国の特別ニーズ教育の歴史的系譜では、(1)「ジョン・デューイと多文化協同の教育実践-19世紀末シカゴの移民・貧困児童問題とソーシャル・セツルメント-」(「第28回国際理解教育賞(奨励賞)」受賞論文、2003)、(2)「デューイ教育学と特別な教育的配慮の原理-教育における多様性と協同の視座-」(『学校教育学研究論集』8、2003)、(3)「ジョン・デューイとシカゴのソーシャル・セツルメント-デューイ実験学校とJ.アダムズのハル・ハウスの実践的交差-」『社会事業史研究』第31、社会事業史学会、2003)、(4)「John Dewey and the Practice of Multicultural Corporation ; Focus on Chicago's Social Settlement for Problems of Immigrant and Poverty in the End of the 19^<th> Century」(『東学大紀要』55、2004)、(5)「米国における義務教育普及と特別な教育的配慮の史的研究-19世紀中葉以降の東部諸州の動向を中心に-『障害者問題史研究紀要』40、精神薄弱問題史研究会、2004)などの研究成果を発表した。 スウェーデンの特別ニーズ教育の歴史的系譜では、(1)(2)「19世紀後半のスウェーデンにおける学習困難児問題と補助学級の成立-スウェーデン最初のノルシェーピング市補助学級誕生の背景-」「Special Education and Inclusion for Children with Disabilities in Sweden ; Its Ideas, Principle, History and Practice」(『東学大紀要』54、2003)、(3)「スウェーデン最初の補助学級「セーデルベリィ学級」(1879年開設)と学習困難児教育の実際-子どもの出席簿および成績評価一覧表の検討を中心に-」(『北欧史研究』21、バルト=スカンディナヴィア研究会、2004)などの研究成果を発表した。
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