【ダイナミックパラトグラフによる軽度障害児の構音学習に関する研究】 本研究は、(1)軽度障害児の中でも、知的遅れはないが学習障害(LD)を伴う構音障害児の構音学習に焦点を当てた事例研究である。(2)さらに、従来の構音学習に見られた学習効果の表示方法(%)から、より直感的に理解しやすい表示方式を開発した。 (1)について、学習障害児で知的な障害は殆ど無いと診断されてはいるが、構音に誤りがある児童3名を対象に週1回、1回50分の構音学習を行った。その際、ダイナミックパラトグラフを用い、まず、舌と口蓋の接触パタンが、音韻によって異なることを理解させた。次に、各自の誤った構音のパタンと訓練者の正しいパタンに違いがあり、それが不正構音の原因であることを理解させた。その後、改善マニュアルに従い、各自の正しい構音獲得まで訓練を行った。知的障害を伴わないLD児であり、訓練効果は大きいものであった。 昨今の個人情報の扱いに関する留意点から、被験者のデータについて個人が特定できない形で開示の許可を求めたが、1名の被験者からしか許可は得られなかった。 (2)従来の構音訓練の成果を測る尺度は、発語明瞭度(%)が主であった。しかし、これでは訓練経過に伴う正しい構音獲得が本人に実感として把握できない。そのため、本研究では、単音節発話時の舌の接触パタンを示すLEDの表示数が最大数になる時刻のパタンを、その単音節の代表値とし、多変量解析の手法を用いて、発話時の単音節を2次元平面におけるお互いの距離として表した。初期の不正構音から正構音に近づけば近づくほど、音節の距離が離れることになり、訓練の効果が視覚的に、かつ直感的に本人にも理解しやすい表示となった。しかし、単音節発声中のLEDの最大表示数を代表値にすることは、厳密には正しいとはいえない。時間による変動を伴うデータでは、どの値を代表値とするかは、今後の検討課題として残された。
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