本研究は、重度の発達障害、特に対人関係や社会的相互作用の質的障害、コミュニケーションの質的障害、限定された興味・関心や常同的・反復的行動を特性とする自閉性障害を中核とした広汎性発達障害のある児童・生徒を対象とした。今日、通常学級に在籍する高機能自閉性障害やアスペルガー障害のある児童・生徒の支援方法の究明が課題とされており、また、中・重度の知的障害のある自閉性障害児に対する治療教育プログラムの開発されてきた経緯もあり、知的機能の障害をもたない高機能広汎性発達障害のある児童・生徒に対する治療教育プログラムの開発を目的とした。 研究では、大きく5つの研究からアプローチした。第1は発達障害のある児童生徒に対する社会参加に焦点をおいた指導の実態を明らかにするための調査研究、第2は国内外における広汎性発達障害児者への支援の実態に関する視察研究、第3に高機能広汎性発達障害のある児童・生徒の障害特性の解明に関する臨床研究、第4は高機能広汎性発達障害のある児童・生徒への指導方法の開発に臨床研究、そして第5に、広汎性発達障害児の間接支援として保護者や教師など彼らの社会参加を支える重要な人々への支援方法の開発に関する実践研究である。 調査研究から、発達障害のある児童・生徒に対する社会参加に焦点をあてた指導の必要性が確認された。広汎性発達障害児者の支援に関する視察研究から、障害特性の解明と特性に配慮した支援が重要であることが確認された。特性の解明に関する研究から、広汎性発達障害児の発達、認知、学力、社会性、コミュニケーションに関する特性を明らかにすることができた。指導法の開発に関する研究から、適切な先行刺激を整備することによって社会的な行動が成立することが確認された。間接支援の方法の開発に関する研究から、保護者、きょうだい、教師、夏季休業中の支援方法について明らかにすることができた。 以上の研究成果から、高機能広汎性発達障害のある児童・生徒の社会参加を高めるための指導方法の一端を明らかにすることができた。今後は、研究データの積み上げにより、広汎性発達障害のある児童・生徒の幼児期から青年期・成人期に至る系統的で包括的な治療教育プログラムを開発していく必要がある。
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