研究概要 |
本研究では,読み能力に関連する視覚の問題に焦点を当て,その改善を図るための援助プログラムの開発を目的として、以下の3つの研究を実施した。 研究1 読み能力と視機能に関する調査研究 小学校3学年の通常学級に在籍する児童75名を選定し、視覚効率(Developmental Eye Movement Test:DEM)、視知覚能力(Test of Visual Perceptual Skills:TVPS)、読み能力(読書能力診断テスト)を実施した。調査結果から、読み検査とDEMおよびTVPSには有意な正の相関が確認され、読み能力に眼球運動と視知覚能力共に関係していることが示された。一方で、TVPSとDEMとの間には有意な相関関係は認められなかった。この結果は、眼球運動と視知覚の能力は互いに独立性の高く、眼球運動の改善のための援助プログラムが読み能力の改善に効果をもたらすという仮説を支持するものと考えた。 研究2 Developmental Eye Movement Test(DEM)の標準化に関する研究 上記の小学校3年生児童(75名)に加え、小学校4学年児童(65名)、小学校5学年児童(74名)を選定した。3〜5年生児童のDEM得点の比較では、3学年と4学年、3学年と5学年にのみ有意な差が認められた。3学年児童に比べ、4,5学年児童では、読み理解に対する視覚効率の関係が小さくなっていた。なお、測定されたデータをもとに、DEMの学年別得点換算表を作成した。 研究3 読み困難児への支援プログラムに関する研究 一卵性双生児に支援のためのプログラムを実施し、プログラムの有効性について検討した。対象児は小学校4学年に在籍する一卵性双生児の男子2名であった。主訴は、国語の読み書きの学習と他教科での読みを伴う課題の学業不振である。B児のみ、眼球運動促進プログラムを実施し、DEMおよび読み検査をトレーニング前後に実施して比較検討した。計60回のトレーニングを実施した結果、B児にのみDEMと読み検査に有意な向上が確認された。
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