研究概要 |
小学校と連携をとってADHD児への継続的なアプローチを行い,終結した4件を報告する。他にも継続中の事例が多数ある。また本年度は,昨年度のデータを学会で報告した。 1件目は,小学校1年生の学級で,3名のADHD男児が在籍する。影響を受けやすい2名も考慮に入れて席の配置を決定した。2学期の末から,1名のADHD男児を週1回5時間目に個別で取り出し,「ありがとう」,聞き方,温かい言葉かけ,および順番の遵守という基本的な社会的スキルを訓練した。3学期は,他の2名のADHD男児も先のADHD男児に誘われて参加した。担任からロールプレイで利用できる場面の情報を得,スキルの習得状況を報告し,教室内指導に活用してもらった。情報交換は,面接以外に交換ノートで行った。3名とも教室内での問題行動が減少した。 2件目は,小学校3年生のADHD男児で,家族を介して担任と連携をとった。教室内の行動を担任から得て,家庭内の状況と合わせてロールプレイ場面を設定した。また,望ましい行動を強化する親プログラムを実施した。これらの情報は,家族を介して担任にフィードバックし,教室内行動への対応に応用してもらった。担任と直接会うことは非常に少なかったが,家庭内の行動も,教室内の行動も改善した。 3件目は,小学校3年生のADHD男児で,家庭内では叱責のみの養育で,教室で暴言などの問題行動を示していた。対象児は個別訓練を嫌がり,父親の協力は得られなかったので,母親の行動改善が中心となった。母親は子どもの問題行動をABC分析する中で,自分も頭ごなしに叱責ばかりしていることに気づき,ロールプレイを希望した。担任へは母親から家庭内での対応の情報を伝え,教室内行動への対応に応用してもらった。家庭内でも教室内でも,暴言は著しく減少し,望ましい行動が増加した。 4件目は,6年生のADHD男児で,授業不参加や対人トラブルが頻発し,5年生から対応をした。担任から情報を得,対象児への認知を中心としたロールプレイをし,関連した親親プログラムを実施した。これらの情報は,家族を介して担任にフィードバックし,教室内行動への対応に応用してもらった。同時に対象児が担任に自発的に逐一報告を行った。また,校長が担任をフォローした。問題行動はなくなり,対人行動と授業行動が改善した。
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