高機能自閉症における倫理的課題処理時の脳活動の機能的MRIによる研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15530626
• 研究機関: 鳴門教育大学
• 研究代表者: 橋本 俊顕 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (60032364)
• 研究分担者: 原田 雅史 徳島大学, 医学部, 教授 (20228654) ; 森 健治 徳島大学, 医学部, 助手 (20274201)
• キーワード: 高機能自閉症 / 機能的MRI / 脳血流 / モラル課題 / 画像

研究概要

自閉症は根底には脳の器質的障害があり、「心の理論」、実行機能、中枢統合機能などの機能不全が生じ社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害の3徴候を示すと推測されている。このことから、社会のルール、特に明文化されない暗黙の了解、道徳的、倫理的事柄の把握が困難である。さらに、こだわり、興味の偏り、因果関係のつかみにくさから学校生活での問題行動や日常生活においての様々なトラブル、触法行為を起こしてしまうことも報告されている。本研究では自閉症児に見られるこのような問題行動と脳機能の関係を明らかにするために、倫理・道徳的問題行動の場面を画像として課題負荷し、良い、悪いの判断を求め、その情報処理の過程の脳活動をfMRIを用いて測定した。刺激は課題負荷45秒-コントロール課題45秒を2回、1シリーズ3分の構成のbox-carデザインで行い、判断できた合図は右手でスイッチを押させた。対象は高機能自閉症男児4名(12〜14歳)と健常男児3名(13歳)の計7名である。検査に際しては保護者及び被験者に十分に説明し納得と同意を得た。高機能自閉症児のうち2名は体動のアーチファクトのため結果から除外した。健常者では左右側頭・後頭境界部、左中心前回、前頭葉腹側(左または右)に活動性の亢進が見られた。また、1例では左側頭極にも活性が見られた。高機能自閉症の1例では左中心前回、左中心後回、左運動前野、右頭頂葉、右角回、側頭・後頭境界部(左<右)に活性が見られたが、前頭葉腹側の活性は認められなかった。他の例では左中心前回、左中心後回、左運動前野、左頭頂葉、左右後頭部外側、前頭葉腹側正中部に活性が見られた。自閉症と健常児の間では課題の正答率に差はなかった。課題の正答率に差がなかったがこれは課題内容が簡単であったことが想定されるが、実際の場面では情動負荷があることが多いことから、そのような負荷がかかっていないので差が出なかったとも考えられる。fMRIの結果から自閉症では課題処理の系が健常者と異なることが想定されるが、さらに例数を増やして検討することが必要である。

研究成果

• [文献書誌] 森 健治, 橋本俊顕, 原田雅史, 東田好広, 宮崎雅仁, 山上貴司, 田尾佳代子, 黒田泰弘: "West症候群におけるin-vivo 1H-MRSによる検討-ACTH療法の及ぼす影響について-"てんかん研究. 21. 167-174 (2003)
• [文献書誌] 森 健治, 東田好広, 宮崎雅仁, 橋本俊顕, 黒田泰弘: "3-DMR画像によるWest症候群の扁桃体体積の測定"脳と発達. 35. s157 (2003)
• [文献書誌] 東田好広, 宮崎雅仁, 森 健治, 橋本俊顕, 黒田泰弘: "3-DMR画像を用いた自閉症児における前頭葉体積の測定"脳と発達. 35. s160 (2003)
• [文献書誌] Mayumi Takeuchi, Masafumi Harada, Kenji Matsuzaki, Hiromu Nishitani, Kenji Mori: "Difference of signal change by a language task on autistic patients using functional MRI"J.Med.Invest.. 51. 59-62 (2004)
• [文献書誌] Mayumi Takeuchi, Masafumi Harada, Kenji Matsuzaki, Sonoka Hisaoka, Hiromu Nishitani, Kenji Mori: "Magnetic resonance imaging and Spectroscopy in a patient with treated methylmalonic acidemia"J Comput Assist Tomogr.. 27. 547-551 (2004)