研究概要 |
音韻障害に関連する要因に関連する指標を検討するため,資料の収集,実験対象児の調査,および実験プログラムの作成と予備実験を行った。 1.音韻障害の要因に関連する指標の検討:平井,飯高担当 (1)文献資料と学会(ASHA2003)参加により最新の研究成果を収集した.その結果,音韻情報を処理するための前提となる語音知覚能力について音韻障害の要因に関連する指標としての有効性を検討することにした. (2)語音知覚能力については,英語を母国語とする小児の摩擦音/s/の知覚において,手がかりとなる音響的特徴が発達的に変化するという一連の報告(Nittrouer,2002他)があり,発達段階によって手がかりとする特徴が異なると仮定されている.しかし日本語を母国語とする小児および音韻障害児を対象とした研究は未だなされていないため,本研究においては摩擦音/s/を含む音節の知覚について健常成人と健常児の特徴を調べ,音韻障害児の特徴と比較することにした. 2.実験対象児の予備的調査:平井,飯高担当 (1)神奈川県のことばの教室を担当する教諭を対象に,聴覚や発声発語器官,知的発達に問題がないが,音韻障害を呈しかつ通常の治療では改善が困難な児童の存在について問い合わせた.その結果,条件に該当する可能性のある4例から回答があった. (2)個別に担当教諭に対して研究への協力と該当児の保護者の了解の確認を依頼した結果,全例から承諾が得られたため,担当教諭から該当児の聴力,知的発達検査,生育歴・言語発達歴など,基礎的な情報を収集し,今後,実験を行う予定である. 3.実験プログラムの作成:平井,荒井担当 /s/を含む音節の知覚において,フォルマント遷移と摩擦の雑音成分のいずれを手がかりとして重視しているかを調べるため,研究協力者の大学院生の協力を得て,実験プログラムの作成を行った. (1)フォルマント遷移と摩擦の雑音成分のエネルギーの割合を変化させて刺激音声を作成した. (2)刺激音声について健常成人が聴取実験を行い,予備的に音声刺激の妥当性と実験プログラムの手続きについて検討し,本実験を行う準備中である.
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