本研、究は3年間で、以下の4項目について取り組んだ。開発教材の評価は聴覚障害者のための短期大学に学ぶ学生を対象に、その利用可能性を検証した。 1.話しことばと書きことばを明確に使い分ける力を育成するための教材開発 2.論理的に考える力を育成するための教材開発 3.文構造に対する理解を深めるための教材開発 4.論理的な構成を備えた文章を書くための基礎力を養う教材開発 2003年度は研究開始が10月からであったため、1項目に限定し、「1.」に取り組んだ。その中で、電子メールの普及によりワ、従来の「話しことば-書きことば」というくくりでは捉えきれない中間的表現様式が生まれつつある状況に注目し、指導事項を整理する、データを集めるなどして、メール表現を考察し、教材を試作した。 2004年度は主に「2.」と「3.」に取り組んだ。教材評価は研究代表者が担当する授業においてなされたため、シラバスとの関連を持たせながら進めた。機械的画一的な作業課題を排しく一人ひどりの創意工夫が活かされるように留意した教材開発を行った。開発教材は学生の意欲を引き出すことに成功したと思われるが、論理的思考力を向上させたという確実な結果を得るには至らなかった。 2005年度は主に「4.」に取り組んだ。開発教材を用いた教授場面での観察および学生による評価アンケートの結果から、学生の専攻分野に配慮した教材開発に鋭意取り組むべきことが明らかになった。また、学生のアカデミックライティングに対する意識調査を行い、学生の意識・意欲自体は高いが、学生の実践は不十分であることがわかった。学生が考える書記力向上のための方策の優先度も調査から明らかになったが、それは授業者から見て必ずしも肯定できないものであった。この点は今後の教材研究において新たな課題として位置づけられるべきものであろう。
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