研究課題
基盤研究(C)
視覚障害者のパソコン活用英語教育支援とその英語学習における認知過程に関する研究として以下の研究を行った。1.これまでの研究から視覚障害者の英語力不足は障害のために英語に接する機会が少ないことに一因があるという仮説を立て、学習を支援する視覚補償英語学習ソフト(readKON, kobaTEST)を開発し、英語教育に取り入れ、教育的効果を評価した。このソフトを授業・自習に取り入れたことによって、任意のテキスト教材を学習者が障害を補償し読みやすさが増し英語に接する機会が増し、語彙力も上昇した。2.音声は視覚障害者にとって活用しやすい感覚代行情報である。音声による情報呈示の有効性とその認知を知るために音声のみによる英文読解力を検証した。音声提示には肉声を録音したDAISY形式、肉声録音+パソコン、合成音声+パソコンによる問題文読み上げ条件を設けた。DAISYは視覚障害者用のデジタル録音形式としてひろく世界で使用されている形式である。合成音声を用いたことは、肉声録音は問題や教材作成における作成者への負荷が高く、結局この負荷が視覚障害者の英語学習環境を狭めていると考えたからである。結果は、パソコンによる合成音声聴解条件と肉声でテスト得点に差が無かった。3.視覚障害者が英語学習における認知資源の利用を検討するために、全盲・弱視の両障害を対象に点字および墨字による英語リスニング・テストを実施した。問題は英語検定準2級の聴解問題と大学入試センター試験のリスニング試行テスト問題を使用した。リスニング・テストでは問題文を読みながら英語を聴取するタスクが要求されるが、点字使用者は墨字使用者に比べ、聴くまたは点字触読する作業を継時的に行う傾向が強かった。墨字使用者が読みと聴くことを同時処理する傾向があるのとは対照的に、点字使用者では点字処理の認知資源への負荷がより高いことが示唆された。
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