研究概要 |
重度視覚障害者(全盲者、重度弱視者)の職場への進出の停滞について、昨年度行なった雇用者側への聞き取り調査を更に詳細に行うと共に、大学など教育機関におけるカリキュラムなどについて調査を行った。特に本年度は、視覚障害者の能力の適切なPRの方法,視覚障害者の効果的な求職方法などについても検討を行なった。 第一に、障害者の雇用に際して,専門の技能と共に重視する点についてアンケート調査を行った。コミュニケーション能力88.4%,協調性81.4%,指導教官など他者の推薦4.7%,専門に関する各種資格23.3%,専門以外の幅広い教養14.3%,専門技能以外考慮しない0%,その他7.0%と,コミュニケーション能力と協調性を重要視する事業所が圧倒的に多く八割以上にのぼっている。組織内において周囲との関係を上手に作ることのできる人を望んでいる。また,ビジネスマナー,健康,文書作成能力があげられている。過去においては,幅広い教養のもとで新入社員の社内教育を行なうという状況であったが,昨今の経済状況はこれを許さず,即戦力が求められており,このことは障害者の雇用に際しても同様である。ビジネスマナーが採用の段階で考慮されるのは,象徴的である。 第二に、海外における障害者の就労状況について、大学を中心に聞き取り調査を行った。シドニー大学では、障害学生の就学支援が行なわれているが、就職に関しても、様々なサポートをしており、健常者と同様の職域についている。イタリアでは、世界でも有数の普通学校での視覚障害者の教員が多いという国である。また健常者などと変わらず,法学の仕事をしたり,情報など色々な分野で仕事をしている。ただ,現在は普通の人間でも仕事を探すのは難しい状況ではある。障害者の能力のPRについては、HPやE-mailを使う方法と共に、公民の就職相談会への出席も具体的能力を提示できる場として極めて重要である。
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