本研究は研究期間を通じて継続的関係の成立する契約に関し生じた消費者紛争の事例研究を進めつつ、同時にそれらの契約紛争を規律する法的ルールおよび、法的原理を探求してきた。そこで、一方では紛争解決のなされる「現場」での様々な工夫、アイデアに帰結する「コンテクストの中での技法」としての法的な様々な試みの実態とその理論的重要性を検討しようとし、その成果の一部を論文「非援助の支援と民事法学一法・コンテクスト・技法-」、および「法主体のゆくえ」として公表した。他方、現場の具体的文脈を越えた、制度設計や一般的ルールの定立の次元における原理を検討し、その成果を論文「現代不法行為法学における『厚生』対『権利』-不法行為法の目的論のために-」、および「競争秩序と契約法-「厚生 対 権利」の一局面-」として公表した。上記の研究はいずれも契約法における、コンテクストと制度のそれぞれの重要性を新たな視点で明らかにし、またそこで働く原理について考察することの重要性を指摘しようとしたものである。その際、いずれの局面においても重要な二つの原理、つまり、契約当事者の総計としての「厚生」(Welfare)の極大化を志向する「目的論」的契約原理と、他方では、契約当事者の「権利」保護を志向する「権利論」的契約原理とが重要な役割を果たしていることを明らかにした。またこれらに関連して執筆したその他の論文がなお数編あるが、いずれも2007年度中に公表される予定である。
|