研究概要 |
今年度の研究業績として、以下の2点がある。 1.巡回群からn次交代群への準同型の個数に関する指数型母関数はexp(f(x))/2+exp(g(x))/2のように2つの指数関数の和を1/2倍した形で表される。ここでf(x)およびg(x)はAの置換表現上の和で記述される多項式で、Aの置換群としてのふるまいに依存してそれらの項が定まっている。さて、得られた研究成果として、この和に現れる指数関数exp(f(x))およびexp(g(x))がもつp進べき級数としての性質を調べることにより、exp(f(x))およびexp(g(x))をそれぞれ数列{h_n}と数列{r_n}の指数型母関数と見るときのh_nおよびr_nをp進解析関数を用いて記述したことが挙げられる。特に、h_nとr_nのうちの一方は巡回群からn次対称群への準同型の個数であるから、n次対称群におけるx^d=1の解の個数に関するp進的な性質を得たことになる。また、その結果として,巡回群からn次交代群への準同型の個数を割り切る素数Pの最大のべきの下限が得られた。 2.有限群Gにおけるx^d=1の解の個数はGの位数とdの最大公約数の倍数であるが(Frobeniusの定理)、それが丁度Gの位数とdの最大公約数に一致するならば、x^d=1の解の集合はGの部分群であるということが知られている(Frobenius予想)。この事実を一般化するための基礎になると思われる次の予想をたてた。「Hを有限単純群として,HをHの内部自己同形とみなす。GをHの自己同形群とし,Gの元aはHの元ではなく、a^2はHの元であるとする。このとき、Hの約数eがHの位数を割り切る2の最大のべきの倍数であり、しかも、aHにおけるx^<2e>=1の解の個数が丁度eならば、すべてのaHの元がx^<2e>=1の解である。」この予想についての研究成果として、Hがn次交代群である場合にはこの予想の主張が正しいことが証明された。その証明には1で記述した「巡回群からn次交代群への準同型の個数を割り切る素数pの最大のべきの下限」に関して得られた結果を応用することができる。
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