研究概要 |
1.昨年までGarrett-BoechererよるSiegel-Eisenstein級数の引き戻し公式、伊吹山による保型形式の空間上の微分作用素、および本研究代表者によるSiegel級数の明示公式を用いて保型形式のスタンダードL関数の特殊値をいくつかの場合について厳密に求めたが、今回は次の場合にそれを拡張した: (1)M, Nを平方因子を持たない自然数とし、ψ,χをそれぞれM, Nを導手とするDirichlet指標とするとき、Neben type ψの1変数尖点形式のスタンダードL関数を指標χでひねったものの特殊値を厳密に求める公式を得た。 (2)種数2でレベルが1のSiegel尖点形式のスタンダードL関数の特殊値の計算例を増やした。この数値例はGross-Prasad予想のある場合を数値的に確かめる時に役立つものと思われる。 2.レベルが素数pのp進整数環上の半整数対称行列による表現の局所密度に関して有用と思われるいくつかの関係式を昨年度得たが、今年はさらにその精密化を得た。この結果を用いて、2次指標をNeben typeとするSiegel Eisenstein級数の空間が種テータ級数(genus theta series)によって張られることを示した。(R.Schulze-Pillot氏との共同研究)この成果は2004年2月浜松で行われた「第3回保型形式周辺分野スプリングコンファレンス」で公表された。この結果はNeben typeのときの基底問題(basis problem)「Siegel保型形式はSiegel theta級数で生成されるか」を解決する糸口になるものと思われ現在検討中である。(S.Boecherer氏およびR.Schulze-Pillot氏との共同研究)また、上に述べた関係式は長岡昇勇氏が提唱した問題「p進Eisenstein級数が真の保型形式となるか」を解決する重要な道具なるものと思われる。
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