本研究の目的は、頂点作用素代数のオービフォールド、すなわち自己同型による固定点全体のなす部分代数の構造を調べることである。頂点作用素代数のオービフォールドは、ツイスト加群の理論、量子ガロア理論などの研究手法が開発されてきているが、詳しくその構造を研究することは一般に難しい。今年度は、主として頂点作用素代数の重要な例である格子から定義される頂点作用代数のオービフォールドについて研究を進め、次の成果を得た。 1.格子が固定点のない位数3の自己同型を持つ場合、その自己同型は格子から定義される頂点作用代数の位数3の自己同型を引き起こす。この位数3の自己同型による既約ツイスト加群を決定した。この結果は、位数3の自己同型によるオービフォールドの表現論を展開する際の基礎となるものである。 2.A_2型ルート格子を√2倍したものと、その固定点のない位数3の自己同型を考える。この格子から定義される頂点作用素代数には、3-State Potts modelと呼ばれる位数3の対称性を持つ部分代数と位数4の対称性を持つ部分代数のテンソル積が含まれることが知られていた。今回、位数4の対称性を持つ部分代数の位数3の自己同型によるオービフォールドを詳しく調べ、それを用いてムーンシャイン加群の持つ対称性のうち3A元を頂点作用素代数の立場から説明することに成功した。 3.与えられた頂点作用素代数の部分代数を構成する代表的な方法として、オービフォールドのほかにコセット構成法と呼ばれるものがある。A_1型ルート格子を√2倍した格子から定義される頂点作用素代数をもとに、コセット構成法によりその部分代数としてパラフェルミオン代数を具体的に構成した。
|