2年間の研究期間において、頂点作用素代数の重要な例である格子から定義される頂点作用素代数について、自己同型によるオービフォールドの研究を進め、次の成果が得られた。 1.格子が固定点のない位数3の自己同型を持つ場合に、その自己同型により引き起こされる、格子から定義される頂点作用代数の位数3の自己同型を考察し、この自己同型に関する既約ツイスト加群を決定した。 2.A_1型ルート格子を√2倍した格子と、その格子の固定点のない位数3の自己同型を考える。この格子から定義される頂点作用素代数の位数3の自己同型を詳しく調べ、モンスター単純群の3A元と対応する、ムーンシャイン加群の持つ対称性との関係を考察した。 3.A_2型ルート格子を√2倍した格子から定義される頂点作用素代数の内部に、部分代数としてパラフェルミオン代数を具体的に構成した。 4.A_2型ルート格子を√2倍した格子から定義される頂点作用素代数には、格子の位数3の自己同型から引き起こされる自己同型がある。この自己同型によるオービフォールドにおいて、3-state Potts modelと可換な部分代数として、中心電荷6/5のヴィラソロ代数を含むW_3代数を構成した。さらに、その既約加群をすべて決定した。 5.E_6型ルート格子を√2倍した格子から定義される頂点作用素代数の中に、物理学においてtricritical 3-state Potts modelと呼ばれる、中心電荷6/7のヴィラソロ代数を含む部分代数が存在することを示し、その既約加群およびフュージョンルールを決定した。
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