研究概要 |
平成15年度はまず研究環境を整えるに意を用いた。Power Macintosh G5 2GHz Dualに2.5GBのメモリを積んだコンピュータを導入し、非常に速いグレブナーエンジンを実装した計算機代数ソフトであるSingularをインストールした。この上でのプログラム開発に習熟するために、簡単なアルゴリズムについてプログラムを実験的に試行する作業を行った。 当面は,標数2という特別な条件下のみで存在が証明されているP^5上の直和分解しない階数2ベクトル束である丹後バンドルの直和分解するベクトル束による還元列の計算,さらにはコホモロジーの計算の実行を目指し,アルゴリズムの準備と,実行可能なプログラムの構築を始めている.これらが計算可能になれば,最も興味のある自己準同型層の0,1,2番目のコホモロジーの計算にも見通しがでるものと考えている.この問題に関する最終的な目標はモデュライの非特異性に関する障害理論の計算である. 今年度は試行・準備段階であり上記の目標についての具体的な成果は出ていないが,ベクトル束のモデュライに関わる重要な普遍量である,ドナルドソン多項式の計算について,具体的計算の見込みのある方法の確立について大きな成果を挙げた.実際,研究グループ内の大学院生である山田紀美子は,代数曲面の偏極構造を変えたとき,安定層のモデュライがどのように変わるかを詳しく調べ,モデュライ間をつなぐ双有理写像を具体的に書く方法を発見した.これによりドナルドソン多項式の変化を調べ,その計算が可能になる場合が幾つかあることがわかった.
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