研究概要 |
代数的ベクトル束の存在、構成問題は、代数幾何学における古典的な問題といえる部分多様体それと密接に関係する重要な課題である。代数曲線上ではWeilのautomorphic formの一般化という夢に触発されたGrothendieck, Atiyahによる先駆的な研究の後、Narasimhan, Seshadri, Mumfordr等の研究はモデュライの構成とその性質まで及び、まだ多くの課題が残るものの基礎付けはできたと言ってよい。Schwarzenbergerは代数曲面上のベクトル束の研究の端緒を開いたが、2次元以上の代数多様体上のベクトル束の存在問題に一般的成果を上げたのは本研究代表者である。しかし、4次元以上の射影空間上の低い階数のベクトル束の存在、構成問題は未だ全体像が見えない状態にある。その中で、標数2の体上ではあるが、P5上で階数2かつ直和分解しないベクトル束である丹後束は大きな意味を持っている。本研究では計算機代数を使って丹後束を研究することを中心課題とした。丹後束を計算機代数上で表現することに成功した(2次の斉次式を要素とする15×34行列)が、これを使ってベクトル束を定義する変換行列、丹後束の直線束の直和による還元列が(計算機代数上で)計算できる。さらにChern類の計算、それを基に第一Chen類を0に移動させた丹後束の0番目のコホモロジーを(計算機代数を使って)計算すると、コホモロジーが消滅していることが分かり、従って丹後束が安定ベクトル束であることが示せた。これはモデュライ理論の出発点になるものである。
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