本研究の期間に、モチーフの有限次元性の概念が非常に一般性があることが、Yves Andre氏とBruno Kahn氏の研究によって明らかにされた。本研究はChow Motivesの有限次元性が例えばBloch予想を導く、というところから出発しているわけであるが、有限次元性の概念そのものは一般のテンソル圏でも定式化でき、従ってMixed Motivesの圏でも有限次元性を議論することができる。Mixed Motivesの圏では全ての対象がkimura finiteでないことがわかり(O'Sullivan)、有限次元性はSchur finiteの概念に拡張される必要があったが、その拡張に起因する問題、例えばSchur Nilpotencyの証明などが大きな課題となっていった。 そのような流れの中で、本研究による研究成果は次の通りである。(1)モチーフの有限次元性の概念の整備(2)モチーフ空間の概念の相対化(3)ヤコビアン予想の正標数からのアプローチ(4)アレクサンダーの概念がエタール局所的であることの証明(5)モチーフが1次元であることと可逆であることとの同値性(6)モチーフのSchur次元の発見(7)モチーフの有限次元性が、スムースな変形で保たれることの証明(8)モチーフの有限次元性とモチビックゼータの有理性との関係 この中で、特に今後の研究へのつながりとして期待が持てるのは、(7)である。これはGuletskii氏との共同研究であるが、今のところ、ファイバーがスムースな場合しか証明できていないところが問題で、一般の場合に示されれば、一気にモチーフの有限次元性の証明へつながると思われる。
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