研究課題/領域番号 |
15540039
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中島 徹 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (20244410)
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研究分担者 |
ゲスト マーティン 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (10295470)
小林 正典 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (60234845)
竹田 雄一郎 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (30264584)
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キーワード | カラビ-ヤウ多様体 / 安定層 / モジュライ空間 |
研究概要 |
本年度の当研究の目的は、カラビ-ヤウ多様体の不変量と安定層のモジュライ空間の幾何学の関係を解明することであった。我々は特に正則Casson不変量とよばれる変形不変量を具体的な多様体に対して考察した。その結果として、代数曲線上のベクトル束に付随した射影束内で完全交叉として与えられる多様体上の階数2の安定層のモジュライ空間の構造を完全に決定することができた。具体的には、適当な豊富因子Hを取ればH-安定束とGieseker半安定層は一致し、モジュライ空間は射影空間と同型になることが証明できた。特にモジュライは非特異射影的であるから、その正則Casson不変量はオイラー数から計算できることになる。一方、K3曲面(即ち2次元カラビ-ヤウ多様体)の場合にはモジュライはシンプレクティック多様体であるため有理的にはなり得ないから、我々の結果は2次元と高次元のカラビ-ヤウ多様体の大きな違いを明らかにしたことになる。 上記の結果の証明は、Bogomolov-Giesekerの不等式を応用して、与えられた豊富因子をその十分小さい摂動で置き換えることにより、任意の安定束が二つの直線束の拡大として表せるという事実に基づいている。この様に豊富因子の摂動を使う手法は、射影空間の超曲面であるカラビ-ヤウ多様体の場合にW.P.LinとZ.Qinが既に用いていたが、我々の結果はカラビ-ヤウ多様体のみならず一般に射影束内の完全交叉に対しても成立するという点で大幅な一般化になっている。また、この手法は以前我々がFano多様体をファイバーにもつ多様体の場合に用いた安定束をファイバーへ制限する方法と比較しても様々な点で優れており、今後高次元多様体上の安定束を研究するうえで重要な役割を果たすことが期待される。
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