研究概要 |
今年度は,2変数多重対数関数の接続問題と,多重ゼータ値の級数シャッフル積の関係について集中的に研究した.多重対数関数の線型関係式の中で,双対関係式,和公式,Hoffmannの関係式,あるいは,これらを一般化したところの大野関係式をD加群(微分方程式)の言葉で捉えるには,1変数の多重対数関数の接続公式を考察することで十分であった.この事実を,Drinfeld Associatorの言葉に翻訳するならば,Associatorのみたす双対関係式とHexagon関係式から,これらの多重ゼータ値の関係式が従うということである.しかし,多重ゼータ値の級数シャッフル積を基礎にする複シャッフル関係式をD加群の言葉で理解しようとすると,自然に,2変数多重対数関数の考察へと導かれる.2変数多重対数関数のみたす微分方程式は巾零な2変数KZ方程式であるが,この方程式の接続問題(Associatorの言葉に翻訳すると,Pentagon関係式に相当する)から2変数多重対数関数の級数シャッフル積が導かれ,さらにそれから多重ゼータ値の複シャッフル関係式が導かれる,というの大まかな理論の流れである. この1年間で,深さが2の級数シャッフル積の具体例が理解できたに過ぎないが,その結果を04年11月11日の京大数理解析研究所の短期共同研究会「多重ゼータ値の研究」において発表した.また,同研究会の会議録(数理解析研究所講究録)に論文が発表される予定である. また,04年12月6日から10日にかけて東北大学大学院理学研究科において,『多重ゼータ値と多重対数関数』と題する集中講義を行った.その析の講義緑は,05年中にしかるべき形で出版する予定でいる.
|