研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き,多変数多重対数関数のみたす調和積の構造を,KZ方程式の基本解の反復積分表示を用いて研究した.基本解の分解定理を確立したことにより,これまでよりも深い視点から調和積の構造を解釈することが可能になった.研究室に所属する大学院生らの協力を得て,これまでのところ,深さ2と3の調和積の構造が基本解の分解から従うことが明らかにされている.これらの成果は次の講演において発表されている. 1)「深さ2の多重対数関数の調和積と2変数KZ方程式の接続問題」(大井・上野),日本数学会秋季総合分科会,2005年9月19日 2)「反復積分と多変数多重対数関数」大阪大学大学院数学教室・表現論談話会,2005年12月7日 3)「KZ方程式,多重ゼータ値と非可換幾何学」早稲田大学21世紀COE(多元要素からなる自己組織系の物理)第16回セミナー,2006年1月28日 4)「KZ方程式,多重ゼータ値と非可換幾何学」香川大学教育学部・香川セミナー,2006年2月11日 5)「巾零なKZ方程式の基本解の反復積分による構成と深さ3の多重対数関数の調和積」(庄司・大井・上野),日本数学会年会,2006年3月28 なお,ここで言うところの「分解定理」巾零型のKZ方程式に対して成立するのみならず,普遍的なKZ方程式や,その他のパッフ系についても成立する極めて強力な定理である.この周辺の事情については上記の講演4),5)において触れている.
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