研究概要 |
近年,2次元単位球面$S^2$上の閉曲線対から3次元単位球面$S^3$内のすべての平坦トーラスを構成する方法が開発された.その後の研究により,この構成法を応用した成果が数多く得られ,$S^3$内の平坦トーラスの研究は著しく進展した.これらの研究をさらに発展させ,部分多様体論と他分野との新たな関連を発見することが本共同研究の主要な目的である.以下,本年度研究実績の概要を述べる. 北川義久は,$S^3$内の平坦トーラスの形状をコンピュータを用いて視覚化するプログラムを開発した.このプログラムは,$S^2$上の閉曲線対を初期データとして与えると,これに対応する$S^3$内の平坦トーラスのデータを生成し,これらのデータを3次元ユークリッド空間内の曲面として視覚化する.これを用いて,$S^3$内の平坦トーラスとその対蹠像を同時に視覚化することにより,「$S^3$内の平坦トーラスの直径は$pi$である」という予想の研究を行った. 酒井一博は,写像全体の集合の中の(ある意味で)大きなクラスである擬軌道尾行性を持つ写像を研究対象とし,その$C^r$-位相における内点に属する写像の力学的・微分幾何学的特徴付け(双曲性の証明)に関する研究を行った. 井ノ口順一は,3次元Heisenberg群内で1経数等長変換群の作用で不変な平坦曲面を分類した.さらに,3次元Heisenberg群の軌道型曲面を研究し平均曲率が一定なものを分類した. 相原義弘は,複素射影空間内の任意の因子に対してその因子を除外因子に持つような有理型写像が常に構成できることを示しその大きさの評価を与えた.また2つの複素ユークリッド空間上の解析的分岐被覆空間が一致するような条件を与えた.
|