平成13年9月に筆者が開催した研究集会「結び目と3次元多様体の不変量」のproceedingsの大部分はオンラインジャーナルのGeometry and Topology Monographsから出版された。筆者はproceedingsのeditorとして残る原稿の査読作業も現在すすめている。研究集会のproblem sessionの内容をまとめた未解決問題集「Problems on invariants of knots and 3-manifolds」は最新情報をアップデートしつつ筆者のホームページで公開中であり、proceedingsの一部として出版予定である。 結び目と3次元多様体の不変量の研究の今後の方向性を考える上で、結び目のKontsevich不変量のループ展開が重要であるとおもわれ、これについて筆者は研究をすすめている。ループ展開の1次の項はAlexander多項式という既知の不変量で表示されることが知られており、2次の項を表示する2ループ多項式を調べるのが当面の目標である。現時点では、任意に与えられた結び目に対してその2ループ多項式を求めるための一般的な方法は知られておらず、与えられた結び目に対してその2ループ多項式を計算すること自体が問題である。筆者はすべてのトーラス結び目とすべての種数1の結び目についてその2ループ多項式を明示的に求めた。また、与えられた結び目のケーブル結び目の2ループ多項式を与える公式であるケーブル化公式を導いた。さらに、与えられた結び目の一部分をある種の変換で変形したときの2ループ多項式の変化を記述する公式である手術公式を導いた。
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