研究概要 |
複素2次超曲面の等方的ケーラー部分多様体については,四元数ケーラー多様体特に四元数射影空間HP^nの全複素部分多様体の場合と類似の議論が成立する.本年度は,この事実に着目し、複素2次超曲面の等方的ケーラー部分多様体について研究を進め,興味深い結果を得た. CP^<n+1>を複素射影空間とし,斉次座標系z_1,z_2,【triple bond】,z_<n+2>に関し,z^2_1+z^2_2+【triple bond】+z^2_<n+2>=0で定義されるCP^<n+1>の超曲面をQ^nで表し,複素2次超曲面と呼ぶ.Q^n上CP^<n+1>のFubini-Study計量から誘導された計量を考える.Q^nには,複素共形構造{U_λ,Ω_λ}_<λ∈Λ>が存在することが知られている.即ち,{Ω_λ}_<λ∈Λ>はQ^nの開被覆,Ω_λは,U_λ上定義された複素正則非退化対称2次形式であり,U_λ∩U_μ上で正則関数f_<μλ>が存在しΩ_μ=f_<μλ>Ω_λをみたす.m次元ケーラー多様体M^mからQ^nへのケーラー埋め込みψ:M^m→Q^nが,各点p∈Mでψ^*Ω_λ=0ψ(p)∈U_λをみたすとき,ψを等方的ケーラー埋め込みあるいは等方的ケーラー部分多様体という.本研究で得られた成果は次のとおり. 1.余次元が小さい場合の等方的ケーラー埋め込みの描像を明らかにした.ψ:M^m→Q^nにおいて,n=2mならば,全測地的となる.n=2m+1ならば線織部分多様体となる.そしてこのような例を一般的に構成する方法も示した. 2.等質ケーラー多様体からCP^<n+1>への標準はめ込みが直交表現から構成される場合は,その像はQ^nに含まれ,わずかの例外を除いて等方的ケーラーはめ込みになることを示した.特にエルミート対称空間からの等方的ケーラーはめ込みに対しては高階基本形式について興味深い性質が成立することを証明し,その次数を与える公式も導いた. これらの結果の一部が論文にまとめられ,出版予定である.
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