研究概要 |
1.戸田の積のHopf準同形写像による像の公式は,1962年の戸田の本に書かれている。これには,球面のホモトピー群の決定を主目的としているので,ある制限がついている。博士課程の井上朋久との共同により,戸田の証明方法の類推・拡張をすることにより,この制限を取り除き,有限複体に拡張できる。この拡張された公式を用いて,非安定Adams写像の存在の第3の証明が得られた。 2.n次元の実射影空間をP^n,n次元胞体の接着写像をγ(n-1):S^{n-1}->P^{11-1}とする。2000年に,H-空間P^3の積のHopf構成から誘導されるファイブレーションを用いて,P^3の懸垂EP^3のホモトピー群をある次数まで決定し、P^3同士の縮約積の懸垂の胞体構造を解明した。更に,懸垂Eγ(4)を3個の写像の合成で得られることを示した。これらから,EP^6の恒等写像類の4倍元をある戸田の積で構成し,最後に,この戸田の積がEγ(5)とHopf写像の合成に密接な関係があることを発見し,「懸垂位数」予想を解決した。 3.2を法とするMoore空間M^nとは,実射影平面P^2の(n-2)回懸垂空間のことである。M^{n+1}の2n-1次ホモトピー群の中で,包含写像i(n+1):S^n->M^{n+1}とそれ自身のWhithead積が,直和因子Z/2Zを生成するかどうかの問題は,2002年9月,中国蘇州大学で,ロシア人数学者Skopenkovより,提起されたものである。本問題に対して,彼と協力して,2を法とするMooreのホモトピー群と回転群のホモトピー群の結果を用いて,部分的な解答を与えた。
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