研究概要 |
本年度は研究実施計画に関連して以下のような研究を行った. 1. 結び目のトンネル数の成長度に関する研究 研究代表者の小林はRieck氏(Arkansas大学)と共同で,一般の向き付けられた閉三次元多様体Mに含まれる結び目Kに対してそれ自身のコピーの連結和を繰り返し行ったときそのトンネル数と連結和されたコピーの個数の比率を,その結び目のトンネル数の「成長度」と名づけこれに関する研究を行い以下のような結果を得た.(ここでH, Kは上の通りとする.) 定理1. いまKの外部空間のHeegaard種数はMのHeegaard種数に等しいとする.このときKの成長度は1に等しい. 定理2. いまKの外部空間のHeegaard種数はMのHeegaard種数よりも大きいとする.このときKの成長度は1よりも小さい. 森元勘治は結び目の連結和によってトンネル数の退化が起こるような状況の特徴づけに関する予想(森元予想)を提出しているがこれに関して以下の結果を示した. 定理3. もし三次元球面内の結び目で成長度が1/2より大きいものが存在するなら森元予想の反例が構成できる. 2. ザイフェルト多様体のHeegaard gradientについて Lackenbyはvirtual Haken予想解決の為の技巧としてHeegaard gradientと呼ばれる概念を導入し三次元双曲多様体がvirtually Hakenであることが,そのHeegaard gradientが消滅することと密接に関連していることを示した.研究分担者の市原一裕はこの仕事に関連してザイフェルト多様体について,そのHeegaard gradientがいつ消滅するのかを完全に決定した.
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