研究概要 |
本研究では,3次元多様体上の非特異流の極小集合が,横断的にどのような形をしているかを調べることを目的としている.そこで,曲面の微分同相写像,曲面の群作用,非特異流へと段階を追って研究を試みることを計画し,今年度は特に曲面の微分同相写像について,下記のような成果を得た. 始めに,同相写像の極小集合の位相的な特徴付けについて進展があった.曲面の同相写像の極小集合は,局所連結な場合,一般化されたシェルピニスキ曲線になることを既に証明している.そこで,関連の深い一般位相論の専門家との研究連絡を重ね,一般化されたシェルピニスキ曲線とHandelの例以外に,局所連結でなくても存在しないだろうという予想を立てるに至った.この予想は,「よく知られたもの以外に,平面に埋め込まれるホモジニアスな集合があるか?」という一般位相論の古典的問題と密接に関係している.この問題自体100年近く考えられてきたが未解決である.この点で,上記の予想が本質的であることがわかるとともに,100年分の手法を得ることとなった. 一方,微分同相写像の極小集合の解析にも進展があった.具体的には,3次微分可能な微分同相写像の場合,一定の条件の下で,一般化されたシェルピニスキ曲線が極小集合にならないことを示した.現在のところ,条件が技術的なため,結果としては不十分であるが,一般化されたシェルピニスキ曲線は,3次微分可能な微分同相写像の極小集合とならないという予想を裏付ける形となった. 最後に,極小集合が一般化されたシェルピニスキ曲線になる微分同相写像の構成について,多くの時間をさき,まったく新しい例の構成に成功した.マックシュビンゲンの例以外に例がない状態で分類を押し進めることは大変危険なため,構成を試み,射影的アノソフ微分同相写像の強不安定多様体から,新しい例を作った.
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