研究概要 |
円板上で定義され1-助変数をもつ連続写像族の不動点の分岐について考察し,分岐によって生まれる分枝の位相的性質に関する成果を得た。 このような写像族の不動点からなる分枝は一般に曲線となるが,特にこの曲線が円周と同相であるものについて研究した。区間と同相な分枝を自明な分枝と呼ぶことにし,写像族は2本以上の自明な分枝をもつと仮定する。このとき,円周と同相な分枝とこれら自明な分枝との絡み数は零であることを証明した。 この証明は,Geoghegan, Nikas達が1990年代中頃に開発した1-助変数付き不動点理論を応用することによってなされる。この不動点理論は,コンパクトな空間を定義域としてもつ写像族に対し,その定義域の基本群の元の正規化群が定める1次元ホモロジー群に値をもつ指数を定義するものである。本研究が扱う問題の場合は,写像の定義域が穴あき円板であり非コンパクトであるため,定義域をコンパクト化し彼らの理論を適用可能な形に修正する必要がある。このコンパクト化において新たに現れる不動点の指数は消えることを証明し,コンパクト化が可能であることを示した。また,指数が属するホモロジー群を求めるため,コンパクト化によって得られる空間の基本群の元の正規化群を求めることが必要となるが,この群が整数全体からなる群と同型であることを示した。
|