研究概要 |
本年度は,ケーラー・ファイブレーションの微分幾何学の研究の中でも,特に,線識多様体について研究した。全空間がコンパクトなリーマン面上の正則ベクトル束に同伴した射影化束になっている線識多様体は,コンパクトなケーラー多様体である。このことから,与えられた正則ベクトル束には負曲率の凸な複素フィンスラー計量が存在することが示される。この事実を用いて,フィンスラー幾何学の応用をケーラー・ファイブレーションの微分幾何学の研究に試みた。特に底空間への射影がケーラー・サブマーションになっており,さらに各ファイバーが互いに等長になっている場合について研究し,幾つかの結果を得ることができた。 また,それまであまり注目されていなかったFibred多様体の微分幾何学の古典的手法が本研究に役立つことから,この方面の研究成果との関連を調べることにより,フィンスラー幾何学に現れる様々な量についてその幾何学的意味を与えることができた。本年度の主な研究成果は,線識多様体の微分幾何学のフィンスラー幾何学的考察であり、特にある付帯条件をみたすMinimal ruled surfaceがスカラー曲率一定のケーラー計量をもつための条件を,対応するフィンスラー幾何学の言葉を用いて与えることができた。研究成果のいくつかはハンガリー(Debrecen)での国際会議で報告した。また主な研究成果は論文"Finsler geometry on complex vector bundles"(to appear in Some Perspectives in Riemann--Finsler Geometry, Cambridge University Press-MSRI,2004)として発表予定である。
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