本研究では双曲結び目の非双曲Dehn手術のうち、Seifert多様体を生成する手術(Seifert手術に焦点を絞って研究を進めた。トーラス結び目上のSeifert手術はトーラス結び目の補空間のSeifertファイブレーションの拡張という観点から自然な説明がつくことが知られている。そこで、双曲結び目上のSeifert手術はどのようにして生じているのか、その自然な説明を与えることを目標にさまざまな角度から考察した。Gordonは1996年にすべてのSeifert手術がprimitive/Seifert構成と呼ばれる構成法で説明可能であるという予想(primitive/Seifert予想)を提出した。この予想に関しては、前年度までのMattman氏、宮崎氏との共同研究により反例の存在が明らかになっていた。それらの例では強可逆性をもたない結び目のSeifert手術であるという点が本質的であり、強可逆性をもつ結び目のSeifert手術に対しては依然としてprimitive/Seifert予想が正しい可能性が残されていた。本研究ではまずこの点を明らかにすることを目標に研究を進め、Song氏との最近の共同研究で強可逆性をもつ結び目のSeifert手術であるにもかかわらずprimitive/Seifert構成では説明不可能な例を構成することができた。この例はSeifert手術の説明に有効である、分岐被覆を用いたMontesinosトリックによる構成とprimitive/Seifert構成とが同値でないことも示ている。現在、これらの例をもとにSeifert手術を説明する手法を整理し、それらの間の相互関係をより明確にする研究を継続して進めている。また、いずれの構成法も結び目の対称性やトンネル数とも密接に関係しているので、今後これらの関係も明らかにしていきたい。
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