本研究では非双曲Dehn手術のうち、Seifert多様体を生成する手術(Seifert手術)に焦点を絞って研究を進めた。トーラス結び目上のSeifert手術はトーラス結び目の補空間のSeifertファイブレーションの拡張という観点から自然な説明がつくことが知られている。本研究では、Seifert手術を説明する手法を整理し、双曲結び目上のSeifert手術がどのように生じるのか、その"自然な"説明を与えることを最終目標に研究を進めている。特に平成16年度はファイバー結び目のファイバースロープ(ロンジチュード)に沿ったSeifert手術について詳しく調べた。これまでロンジチュードに沿ったSeifert手術の例は知られておらず、ロンジチュードに沿った手術ではSeifert多様体は生じないものと期待されていた。本研究ではSnapPeaによるコンピュータ実験を通してロンジチュードに沿ったSeifert手術の無限個の例を構成することに成功した。ここで得られたロンジチュードに沿ったSeifert手術では、いずれも結び目補空間内の最短測地線と結び目の絡み数が1になっている。また、これらの最短測地線はSeifert手術後ファイバーになることが確認されている。ファイバーの位置をもとにSeifert手術を調べるという考えは、本研究の主要なテーマであり、特に、結び目と最短測地線の絡み数はSeifert手術に関して多くの情報をもっているものと期待される。今後、この方面の研究をさらに深めていきたいと考えている。 また、本研究ではファイバー結び目の補空間が円周上の曲面束になっている点に着目し、そのモノドロミー(貼り合わせ写像)のNielsen-Thurston型の研究と並行して研究を進め、モノドロミーが周期的な場合に曲面束の切断として現れる結び目が双曲結び目になるための必要十分を与えた。
|