研究概要 |
距離空間とCW複体を含む一般距離空間のクラスで,もっとも重要なものがM_3-空間のクラスである。M_3-空間に関する未解決問題のなかで本研究成果に最も関係のあるは、1992年に提出されたM_3-空間をファクターにもつ積空間の正規性と加算パラコンパクト性の同値問題である。 上記の問題は、3年間の研究期間においてはいまだに完全な解決には至っていない。しかし、この問題においてM_3-空間をファクターにもつ積空間の被覆性の研究がその解決に不可欠であるとの認識に至った。そのために平成15年度は、基パラコンパクト性という2003年に導入された新しい被覆性の積空間における研究から始めた。そして、平成16年度には、積空間上の多少特殊であったその被覆性の研究は、一挙に積空間上の正規被覆の特徴付けという思いもかけぬ一般的な方向へと発展していった。そこでの本質的なアイディアは、長方形の細分という概念を用いたことである。さらに、これまで扱ってきた積空間はX×Yの形のものであったが、平成17年度には無限積空間上の正規被覆についても同様の特徴付けができることを証明した。有限積空間と無限積空間では状況や立場は全く異なるので、その証明方法は大きく異ならざるを得ないにもかかわらず、結果的にほぼ同様の形が得られるということは驚くべきことである。ついでに無限積空間において開発した証明テクニックは、1989年以来長年にわたって未解決であったΣ-積空間の正規性の問題に完全な解決まで与えた。 順序数の部分空間、A, Bの積空間A×Bの正規性を中心とした研究は、上記の研究を特殊な世界で論じていいるだけに、異常な結果や予想外の結果が数多く得られる。この研究に関しては、家本宣幸氏の独壇場といえる。酒井政美氏も関数空間や自由位相群で独自の世界を築いており、上記の研究とやがて大きく関連してくることになる。
|