研究課題
[1]年齢構造をもつホスト人口におけるSIR型の感染症の流行モデルを、一次同次の無限次元力学系として定式化したうえでその数学的構造を解析している。特にホスト人口は安定人口モデルによって記述される場合をとりあげ、漸近挙動を考える限り、すでにホスト人口が安定年齢分布を到達していると仮定して導かれる正規化システムを考察すれば充分であるという線形安定性原理を示した。この原理にもとづいて、ホスト人口が母親由来の受動免疫をもつシステムへ具体的に適用して、基本再生産数がある正値積分作用素の正固有値で与えられることを示した。基本再生産数が1より小であれば、感染のない定常状態が大域的に安定となり、1より大であれば自明な定常解は不安定化してエンデミックな定常解が前進分岐によって現れるが、感染力が十分に小さい範囲では、エンデミックな定常解は局所漸近安定であることが示された。[2]人口学において近年おおきな論争となったBongaartsとFeeneyによって提起された平均寿命のテンポ歪み現象とその理論モデルを、非反復事象のサバイバルモデルによって再定式化して考察した。期間サバイバルモデルのエイジシフトが、ハザード、発生率、サバイバルレイトの各パラメータで発生する場合のテンポ指標の変換公式を導いた。Bongaarts-Feeneyのモデルは死亡率モデルのサバイバルレイトにおける期間エイジシフトの発生による変換公式であると考えられる。その結果、平均寿命の「テンポ歪み」という表現は適切ではなく、提起された期間指標の有効性はモデルの仮定の現実的妥当性に依存していることを明らかにした。
すべて 2006 2005
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Discrete and Continuous Dynamical Systems, Series B 6・1
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