研究課題
年齢構造をもつホスト人口におけるSIR型の感染症の流行モデルを、一次同次の無限次元力学系として定式化したうえでその数学的構造を解析した。特にホスト人口は安定人ロモデルによって記述される場合をとりあげ、漸近挙動を考える限り、すでにホスト人口が安定年齢分布を到達していると仮定して導かれる正規化システムを考察すれば充分であるという線形安定性原理を示した。この原理にもとついて、ホスト人口が母親由来の受動免疫をもつシステムへ具体的に適用して、基本再生産数Roがある正値積分作用素の正固有値で与えられることを示した。Ro<1であれば、感染のない定常状態が大域的に安定となり、Ro>1であれば自明な定常解は不安定化してエンデミックな定常解が前進分岐によって現れるが、感染力が十分に小さい範囲では、エンデミックな定常解は局所漸近安定であることが示された。またこのフレームによって、垂直感染のあるSIR型感染症の年齢構造化モデルを考察した。ホスト人口は安定人口であると仮定され、垂直感染も考慮に入れる。我々は半群アプローチによって基礎モデルの適切性を証明し、ついで基本再生産数がある正値積分作用素のスペクトル半径で与えられることを示した。基本再生産数が1より小であれば、感染のない定常状態が大域的に安定となり、1より大であれば自明な定常解は不安定化してエンデミックな定常解が前進分岐によって現れる。感染力が十分に小さい範囲では、エンデミックな定常解は局所漸近安定であることが示されるが、一般の場合、エンデミックな定常解の一意性と安定性は未解明である。水平感染においては、感染率が感染者の年齢に依存しない場合、ある条件のもとで基本再生産数が人口成長率の減少関数であることが導かれる。そのような場合には、先進諸国のような成長率が低く高齢化した人口は感染症の侵入に対してより脆弱であることが示唆される。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Journal of Mathematical Biology 54
ページ: 101-146
Journal of Theoretical Biology 244
ページ: 357-364
Discrete and Continuous Dynamical Systems, Series B 6・1
ページ: 69-96
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 51・1
ページ: 12-18
Mathematical Biosciences 201
ページ: 15-47
Hyperbolic Problems. Numerics and Applications 2
ページ: 33-40