本年度は次の様な二つの大きな進展が見られた。これらは、事前には予想されていなかったものであり、当初の計画には無い成果である。 [1]数式処理を用いない楠岡近似のアルゴリズムの開発。 これ迄は楠岡近似を実現するために自由Lie環の計算を必要としていた。これは対象とする方程式が複雑になるばあい記号処理プログラムによって計算機で実行する必要があった。これに対し新しいアルゴリズムは、楠岡近似をRunge-Kutta法の拡張として得られるような数値計算法に帰着させるものである。これは実用上非常に大きな意味をもつ。 [2]楠岡近似の近似精度が漸近展開を有すること。 Oxford大学のNicolas Victoirと共に前述[1]のアルゴリズムを開発し、これの有効性を実証したとき、このアルゴリズムに対し、Romberg外挿法と呼ばれる方法が適用可能であることを発見した。これの証明を得た。
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