研究概要 |
本研究のテーマは本研究の研究分担者によって提唱された、確率微分方程式の弱近似の新しい方法(楠岡近似)を実現するアルゴリズムを開発し、それのファイナンスへの応用の可能性と有用性を探ることである。楠岡近似をそのまま実現する為には厖大な記号計算が必要となり、これは計算機の上で数式処理プログラムを用いて行なわざるを得ないものであり、これが楠岡近似を実際に用いるにあたっての非常に大きな障害となっていた。我々は昨年度、Oxford大学のNicolas Victoirと共同で記号計算を一切用いず、常微分方程式の数値解法のみを用いて楠岡近似を実現するアルゴリズムの開発に成功した。本年度、我々は、やはり数値解法のみで楠岡近似を実現するこれとはまた異なったアルゴリズムの開発に成功した。そして、これら二つのアルゴリズムを既存のEuler-丸山近似法と共にファイナンスにあらわれる確率微分方程式に対して適用しその有用性を調べた。その結果、本研究で得られたアルゴリズムを低食い違い量列と併用することによって、既存のEuler-丸山法と低食い違い量列との併用に対して、1000倍程度の高速化が実現されること、及び、本研究で得られたアルゴリズムは計算機への実装が容易であり非常に実用性が高いことがわかった。これらの結果を、二つの国際シンポジウム(1^<st>.AmaMeF Conference. "Numerical Methods in Finance" February 1-3, 2006, Inria-Rocquencourt, Franceおよび"Stochastic Processes and Applications to Mathematical Finance 2006" March 6-10, 2006,立命館大学 琵琶湖草津国際キャンパス)で発表した。現在、論文作成中である。
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