研究概要 |
集合A上の多変数関数の集合で,射影関数をすべて含み,合成に関して閉じているものをA上のクローンという。A上のクローン全体の集合をA上のクローン束といい,L_Aと表す。一方、A上の1変数関数からなるモノイドの束をM_Aと表す。本研究の目的は,モノイドの束M_Aとクローン束L_Aとの間に定義されるガロア対応に着目し,このガロア対応に伴う基本的な性質を調べることである。 モノイドMに対し,Mに属すすべての関数と「可換」な(多変数)関数の全体をM^*と表す。M^*はクローンであり,Mのcentralizerと呼ばれる。 15年度には,主に次のような研究を行い,成果をあげた。 1.最小クローンをcentralizerとするモノイドの研究 ガロア対応では,大きいモノイドは小さいクローンに対応し,小さいモノイドは大きいクローンに対応すると考えるのが「自然」である。しかし,その直観に反して,比較的小さいモノイドMでそのcentralizer M^*が最小のクローンJ_A(射影関数のみからなるクローン)になる例を,われわれはこれまでの研究の中ですでにいくつか見出した。これは大変興味深い現象であり,centralizerの研究において中心的なテーマの一つとなるものである。今年度われわれはこのテーマについて研究を進め,これまでに得られている散発的な結果を統一的,体系的に扱う問題を考察した。その結果、モノイドMに対し,M^*=J_Aが成り立つためにMがみたすべき判定条件(十分条件)を得た。この条件はかなり強力であり,これまでに得られている具体例はすべてこの条件をみたすことがわかった。さらに,M^*=J_AをみたすモノイドMの新しい例を見つけた。 2.対称群S_Aを含むモノイドに対するcentralizerの研究 一般に,相異なる置換群に対しそれらのcentralizerは常に異なることがわかっている。今年度は,対称群S_Aを含むモノイドに対するcentralizerについて調べ,それらをすべて決定した。ここでも前項に述べた判定条件が有効に用いられた。
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