研究概要 |
様々な物理的状況に対応してその記述に直接寄与する物理的状態を全て選び出す判定基準と共に,選び出された物理的状態をセクター概念に基づいて分類し,それらの物理的解釈を自然に与えるような一般的理論的枠組を論文3で与えたが,それに沿って群・Hopf代数の双対作用・接合積の概念をそこに自然な形で取り込むことと,熱的状況での状態・表現の数学的取扱いに本質的な役割を果たすmodular構造に関わる手法の整備を目的として,セクター理論に非コンパクト群が出現する状況の数学的整備を,第1年目の主要課題として設定した。 この目的のために,論文4では温度の概念がスケール不変性の破れに付随して現れる秩序変数であることを解明すると同時に,上記の接合積代数がミクロ量子系固有の物理量とそれを分類するマクロ変数の両方を含んだ複合系として,破れた対称性の整合的記述において果たす本質的役割を明らかした。この視点を更に一歩進めると,論文5に示すように,破れた対称性に伴って生成される状態のfamilyの記述に留まらず,基本的な自然定数を「動かす」変換を考えることも可能となり,それによってミクロからマクロに及ぶ「理論のfamily」の統一的扱いが可能になる。 これは相転移・臨界現象に伴う相共存や相境界に伴うsingularityの一般的取扱いに重要な役割を演ずることが期待され,セクター理論におけそ分類空間の構造解明に大きく資するものと考えられる。
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