研究概要 |
種々の物理的状況の記述に適合した物理的状態をもれなく選び出すselection criterionと,選び出された物理的状態をセクター概念によって分類し,その物理的解釈を与える一般的枠組を提起した昨年度の研究成果(論文1および概要については論文6を参照)を踏まえて,今年度は,群双対性とmodular theoryに絡む数学的構造を主要な方法論的手掛かりとして,状態・セクターの分類空間の幾何学的解明を進めた。 それによって,ヒステリシスのような熱力学的概念が接続のholonomyとして幾何学的意味を持つこと(論文3),群・Kac代数の双対性定式化で本質的役割を演ずるmultiplicative unitary(またはKac-竹崎作用素)が観測過程の記述において決定的役割を演じ,type III von Neumann環を含んだ量子場の観測過程を記述可能にすること,更に,群双対性の視点からmodular theoryを見直すことによって,そのGalois理論的構造が明らかになった(論文4)。また,量子場の局所状態の相空間的性質を特徴づける核型性条件をmodular theoryとそこに絡む作用素空間の視点から見直すことによってε-entropyの概念が有効に働く可能性が見えてきた(論文5)。これらはセクター理論における分類空間の幾何学的構造解明に重要な新しい視点を与えるものである。
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