研究概要 |
本研究では,従来の直交多項式および連分数展開の理論の拡張を目指している.この目標を実現するために,本年度は,研究計画に従い,離散可積分系と直交多項式について,3項間漸化式を有する双直交関数系の一般的な理論展開に踏み込んで議論した.ここではそのいくつかの例を挙げる. 1.一般化固有値問題に関連したR2型格子 一般化固有値問題に付随した離散可積分系といして,昨年はR1型格子について双線形構造について解析したが,本年度は,その一般化であるR2型格子について着目し,考察した.ここでは,そのスペクトル変形と行列式構造について,双線形形式を用いて議論した.これにより,R1型格子・相対論的戸田格子方程式を含めたクラスでの直接的な対応関係が明らかになった. 2.Thiele多項式 パデ近似の一種であるThiele補間を考える際に表れる多項式について,離散可積分系の観点から考察を深めた.このThiele多項式も3項間漸化式を満たすことが知られているが,この多項式に対するスペクトル変形を与えることで,新しい離散可積分系の導出に成功した.この離散系は,前述のR2型格子とも関係が深く,固有値問題におけるロトカボルテラ方程式に相当する離散系であす.この離散系を用いた一般化固有値問題の解法への糸口となるはずである. 3.不等間隔ロトカボルテラ方程式 離散可積分系の工学への応用として,固有値計算法に対する考察を深めた.既に,原点シフト付のqdアルゴリズムと不等間隔ロトカボルテラ方程式の間に成り立つ変換式を見出しているが,これを用い,直交多項式をモーメントするより直交多項式系を考えることで,原点シフト付きqdアルゴリズムに対する新しい行列式を与えることに成功した.
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